データサイエンスの分野は、近年の技術革命の中心となっており、多くの産業や研究分野での重要性が日々増しています。
この急速な変化を受けて、教育機関もデータサイエンスの教育を強化するのが急務です。
本記事では、数理・データサイエンス・AI教育の現状と、私学助成金がこの分野の教育にどのように貢献しているか、また、大学内に教育リソースが不足している場合のデータサイエンスの教育への取り組みについて実例を踏まえて解説していきます。
データサイエンス教育の現状
こんにちでは産業界や研究機関でのデータサイエンスの需要が増加しており、それに伴い、データサイエンスを学ぶ学生の数も増えています。
そのニーズに答える形で多くの私立大学や学校では、データサイエンスに関連する新しいコースやプログラムの設置が急がれています。
もちろん、理論だけでなく、実際のデータを用いた実践的な学習が重視されており、データサイエンスの技術を習得した人材を増やしていくのが国の戦略でもあります。
しかしこうしたデータサイエンスとAI分野の教育の需要が高まる一方で、教育機関では教員の不足やプログラム開発に必要な予算やノウハウの不足などの課題に直面しています。
経済産業省の「AI人材供給の試算結果」 によると、データサイエンティストを含むAI関連の人材不足は年々増加しています。
具体的には、2018年には33,516人、2020年には44,857人と、その数は大幅に増加しています。
この傾向は今後も続き、AIの需要増加に伴い、さらなる人材不足が予想されます。
データサイエンス教育のための私学助成金の役割
こうした教育機関の課題解決の支援として、私学助成金というものがあります。
私学助成金は、私立の教育機関で質の高い教育を継続的に実施するために、国および地方公共団体によって提供される助成金です。
データサイエンス教育の需要の高まりから、この私学助成金の中に、数理・データサイエンス・AI教育の充実のための予算8億円(+1億円)が組み込まれています。
各大学は、この助成金を自らの特色を活かした数理・データサイエンス・AI教育の強化に使うことができます。
その結果、学生は自分の関心や将来の目標に合わせて、専門的な知識や技能を身につけることができるようになり、社会での活躍が期待されています。
私⽴⼤学等における数理・データサイエンス・AI教育の充実 8億円(+1億円)
AI戦略等を踏まえ、⽂理を問わず全ての学⽣が⼀定の数理・データサイエンス・AIを習得することが可能となるよう、モデルカリキュラムの策定や教材等の開発、取組の普及展開を⽀援
数理・データサイエンス・AI教育に外部リソースを使うメリット
近年の技術の進化は非常に速く、大学だけのリソースでは追いつくのが難しい場合が多いです。
外部リソースを活用することで、最新の技術や知識、実践的な経験を迅速に取り入れることが可能となります。
これにより、学生は現場で即戦力として活躍できるスキルを習得することができます。
■主な外部リソースの種類
- 専門家や業界のプロフェッショナル: 実際の業界での経験を持つプロフェッショナルをゲスト講師として招待し、実践的な講義やワークショップを実施する。
- オンライン教材・e-ラーニング: オンラインプラットフォームを利用して、最新のコースや教材を取り入れる。e-ラーニングのツールやプラットフォームを活用することで、学生は自分のペースで学習することができ、より深く理解することが可能となる。
- 産学連携プロジェクト: 企業や研究機関との共同プロジェクトを通じて、実際の問題解決を経験する。
- データセット: 実際の業界データを使用して、データ解析や機械学習のプロジェクトを実施する。
数理・データサイエンス・AI教育の充実の取り組み事例
久留米工業大学は、次世代技術者の育成のため、全学共通教育科目として「AI概論」と「AI活用演習」を導入しています。
さらに、地方創生のトップ人材・中核人材となりうるAI技術者を育成する目的で、地域課題解決型AI教育プログラムも開始しています。
このプログラムでは、学生はただ基礎的な知識や技術だけでなく、実践的なプログラミング演習を通じて、問題解決の姿勢や力も身につけることができます。
また学外との連携や地域との協力を通じて、数理・データサイエンス・AIの技術を実際の課題解決に活用する方法も学ぶことができます。
このように久留米工業大学では大学の特色を活かし、地域との連携を強化しながら、最先端のAI技術の教育を提供しています。
なお、令和2年度以降に⼊学する理系・文系の問わず、すべての学⽣が本プログラムを履修となっております。
出典:久留米工業大学|数理・データサイエンス・AI教育プログラム
外部リソースを活用した数理・データサイエンス・AI教育の事例
一方で、数理・データサイエンス・AI教育充実のための体制を独自に築くには、リソースが十分でない教育機関も多く存在しています。
こうした場合でも外部リソースに頼る事により、数理・データサイエンス・AI教育の充実に取り組んでいるケースがございます。
例えば、香川大学の取り組みはその代表的なケースとして挙げられます。
このケースは、私学助成金を使った取り組みではございませんが、外部リソースを使って数理・データサイエンス・AI教育の充実に成功した例として、紹介させて頂きます。
香川大学では「DRI教育」という独自の教育プログラムを推進しており、この中に数理・データサイエンス・AI教育を組み込んでいます。
教員が「DRI教育」に沿って作成したコンテンツを基に、提携企業と協力してe-ラーニングプログラムを開発し、学生に提供しています。この取り組みの結果、学生の興味や関心が大幅に上昇しています。
図の引用:香川大学ホームページ
このような外部リソースの活用は、教育の質と効率の向上に大きく寄与しています。特に、香川大学のように実践的な学習経験を提供することで、学生にとって魅力的なカリキュラムを作ることができます。
そして、このような取り組みの重要性は、今後も増していくことが予想されます。
この香川大学の成功事例は、他の大学にとっても参考となるでしょう。
文部科学省もこの取り組みを高く評価し、数理・データサイエンス・AI教育プログラム(応用基礎レベル)として認定しています。
これは、外部リソースの活用が教育界での新しい潮流となっていることを示しています。
数理・データサイエンス・AI教育:私学助成金と外部リソースの活用
近年、データサイエンスやAIの教育の重要性が増してきています。
この急速な変化に対応するため、多くの私立大学や学校は教育内容の充実を図っています。その中で、私学助成金は大きな役割を果たしています。
私学助成金は、私立の教育機関がデータサイエンスやAIの教育を強化・充実させるための資金として提供されるものです。
この資金を活用することで、最新の教育方法や技術を導入することが可能となります。